flutter of birds 〜鳥達の羽ばたき〜
初めに(前書き)
今回は flutter of birds 〜鳥達の羽ばたき〜 について書いて
いますが、この作品の原作は 20 年以上に発売されたものです。
そのため、色々と粗い所やグラフィックの古さなど様々な問題が
あったりします。しかし、それらの欠点を十分に打ち消せる程の
パワーと熱量
を持った作品だと私は思っています。ですが
そう言う事を通常レビューで書くと老害とか言われそうな気がする
のでこちらの方で書いています。まあ、色々と書きましたが簡単に
言えば
私の主観バリバリで書いているので気に入らない場合は
回れ右でお願いします
と言う事です。後、今回は色々と話が
あっちこっちに飛んだりしますので、いつもより読みにくいかも
しれない事をここで謝っておきます。
総評
簡単にまとめちゃうと
この時代らしいエロゲ
と言える作品では
ないでしょうか?この作品が発売された 2001 年発売のエロゲは
多くの作品が今からプレイすればシナリオやシステムの粗や雑さが
あったり、グラフィックの古さが気になったりもしますが、そんな
欠点を
パワーと熱量
で打ち消す。そんな作品が多い気がします。
もっともそれが合う合わないが人によってあるので、その辺りで
好き嫌いも分かれている印象もありますが。この作品で言えば
死生観を軸にプレイする人の心を揺さぶります。各ヒロインが
好きな人にはその結末次第では感動したり泣いてしまった人も
多いはずです。ですがこれをあざといとかご都合主義だと思う
人もいるでしょう。その辺りがプレイする人によって分かれると
思います。ですが、エロゲって古い作品程そう言う部分が多いの
ではないでしょうか?だからこそ熱心なファンはいつまでも続編を
まったり、批判的な内容を書けばすぐに文句をいったりするのだと
私は考えています。ですが、仕方ない部分もあるんですよ。例えば
この作品は、じっくりと読み進めていくタイプのエロゲだと思い
ますが、様々な娯楽がある現代においてはそこまで悠長にエロゲを
プレイしていられないと人も多いはずです。そんな人にはゆったり
まったりした夢のような世界観を軸にさっらっと読んでいける
ようなエロゲの方が気軽にプレイしやすくて良い。という意見も
当然あると思います。その辺りが近年のエロゲに反映されている
のかなと個人的には思ったりもします。そもそも私自身もそんな
エロゲを多くプレイしていますしね。でも、たまにはこうやって
じっくり読み進めていくエロゲをプレイするのも良いな。と思わ
せてくれる作品でした。まあ、だからこそここにこうやって書いて
いるのですが。
シナリオ
20 年以上前に発売されたエロゲなのに現代にも現代でも通じる
1 つのテーマである
死生観。
生きる為に最後まで足掻くのではなく
穏やかに最後を迎える。どちらも正しく永遠に正解などは存在
しない話だと個人的には思いますが、このテーマでシナリオを
進めていった、大気、美雨、つばさ。3 人のシナリオの完成度は
非常に高く好き嫌いは置いておいて、心を揺さぶられる話だったと
思っています。特につばさの個別ルートは色んな意味でヤバかった
ですね。この 3 人には 2 種類のエンディングがあり、身も蓋も
なく言えば、ヒロインの生存 END と死亡 END の 2 種類に分か
れています。ここから先は完全に個人的な意見ですが、どちらの
END にもそれぞれの良さがあると思っています。死亡 END の方は
シナリオの質としては上だと感じますし、心を激しく揺さぶったと
思っていますが、例えご都合主義だと言われようとも生存 END の
方が好きだと言う人の気持ちも分かります。正直、これについても
正解はないと思っています。ちょっとカッコよく言えば、プレイ
した人の中にだけ正解がある。とでも言っておきます。…いやー
書いていて思いましたけどキモイですね。でもそう言いたくなる
作品なんですよ。これは。この辺りはプレイした人ならきっと理解
していただけると思っています。さて、そんな 3 人のヒロインの
中の 6 種類のエンディングの中で一番好きなのはつばさの死亡
END なんですよね。こう書くとつばさが一番好きな人から文句が
来そうな気がしますが、嘘は書けませんからね。私はこのルートが
一番心を揺さぶられましたし、唯一涙が出たルートです。そして
各個別ルート完成度としても作品の中でトップだと思っています。
美雨の死亡 END でも思いましたけど、この作品のタイトルである
flutter of birds 〜鳥達の羽ばたき〜。この
鳥達
の部分は主人公と
ヒロインの事を指していると思っています。そして、つばさの死亡
END でつばさは現世から飛び立ち、主人公は医者の卵から飛び立ち
羽ばたいていった…と解釈しています。その結果がエピローグの
あのシーンへと繋がっているのではないでしょうか?当然これは
あくまで私の解釈なので、他人に押し付けるつもりはないです。
このような考え方もあるって程度に思ってください。さて、後は
残りのヒロインについてですね。この辺りは個人の評価がわりと
分かれると思います。例えば空なんかは、上の 3 人と比べると
手抜きとまでは言いませんが、この作品のテーマの 1 つである
死生観の部分を少し軽んじていると思っています。ですが、内容が
駄目だったかと聞かれればそこまで悪くはないと私は答えます。
もちろん上の 3 人と比べると劣ると思いますが、酷評するほどの
内容ではないです。もっともインパクトが弱いので、どうしても
シナリオの内容を忘れがちになるとは思いますが。個人的に一番
問題だと思ったのはめぐみの個別ルートですね。攻略順の関係上
多くの人が一番最後に攻略する事になるヒロインなんですが、その
割には各描写が少し弱いと思っています。看護婦としての葛藤や
苦労。そんな時にそっと手を差し伸べてくれた見合い相手。優しく
こちらを気遣ってくれる人。しかし、彼と結婚するなら看護婦の
仕事は辞めなければならない。今まで頑張ってきたものを壊して
彼と一緒になるか…それとも終わりの見えないこの仕事を続けるか
そんな時に新しく入ってきた年下の医学生。彼と交流を重ねる内に
少しづつ彼に惹かれていく自分…。題材は良いですし、様々な描写を
いくらでもねじ込めると思います。しかし、お見合い相手と主人公の
違い。医者になるための経験。めぐみ自身の感情の揺れ動き方。
この辺りの描写が乏しかったと感じます。めぐみは言うなればこの
作品のある意味ではとても重要な立ち位置にいるキャラクターで
あり、ヒロインでもあります。そんな彼女を一番最後にプレイした
場合は多くの人が満足出来る内容ではなかったのではないかと私は
思います。まあ、一番の問題は一番最後に攻略するのにそこまで
心を揺さぶる内容ではなかったという事です。単体で見た場合は
そこまで酷評する程の内容ではなかったとは思いますが。後はそう
ですね…大気、美雨、つばさ、の 3 人以外だと白風(シロップ)の
個別ルートが個人的には好きですかね。まあ、彼女の個別ルート
ラストの雨の中を車椅子を押して病院へ向かうシーンは色々と思う
所もあるんですけどね。だって白風の病状を考えるならあの雨の
中を傘もささずに駅から診療所まで車椅子を押すってのは、正直
どうかと思っちゃったんですよね。まあ、それを言い出したらこの
作品のヒロインの一部はセッ○スなんてしたら駄目なんで、ここは
ご都合主義に目をつぶる所なんでしょうけどね。ただ、彼女の目の
問題にサラッと伏線を貼っていたりした所や中盤での彼女とのやり
取りなど見どころも多かったんで、好きな個別ルートではあるの
ですけどね。
グラフィック
正直、グラフィックの出来は悪いです。まあ、2001 年発売の作品
なので、今から見れば仕方ないです。ただ、それを差し引いても
厳しい部分はあります。なのでプレイする前にグラフィックを
確認して耐えられるかを確認しておいた方がいいですね。個人的に
好きな一枚絵は複数ありますが一番好きなのはやっぱりつばさの
死亡 END のラストシーンで主人公がつばさを抱えている一枚絵
です。あのシーンは音楽と組み合わさって凄まじい
破壊力
が
ありました。後、グラフィックの話から少し離れますが、CG鑑賞
とは別にアルバムモードが存在していて、そちらはクリア後には
必ず
見た方がいいです。このモードは選んだヒロインと一緒に
一枚絵を当時を振り返るように見返せる
素晴らしい
モードです。
今現在でもあまり見ないシステムですが、これはかなり良い物だと
思いますね。
音楽
まずは desire ですね。これは使い方が
抜群に上手
でした。と言うか
ハッキリ言えば反則ですよ。出だしの「そっと私を抱きしめて
くれた…」で震えて「滲んでいく世界…」で本当に画面が滲んで
見えるんですから。つばさの個別ルートの片方のラストでこれが
流れた時は本当にそうなっていました。flutter of birds の方も
良かったんですけど、これがエンディングで流れた時って大半が
「ああ…終わったな…」と放心している状態なんですよね。その
ために desire と
比べると
少し印象が薄くなりますかね。まあ単純に
desire が強すぎるだけですけど。それ以外だと音楽鑑賞の track
13、19、28、36、辺りが印象に残ってます。特に 36 は desire の
別バージョンなんですが、これがまた切なく感じるメロディーで
心を揺さぶってくるんですよね。
キャラクター
好きなヒロインなら美雨一択です。好きなヒロイン順に並べると
美雨>>大気>つばさ>シロップ>その他 の順番になります。
つばさも大気も好きですが、美雨が強すぎました。彼女の健気さや
分かりにくくも主人公にそっと寄り添う行動。個別ルートをプレイ
した人なら分かってくれると思っています。それを言えば大気も
そうなのですが、彼女の場合は私が個別ルートのプレイ順を少し
だけ間違えた関係で美雨に届かなかったですね。つばさについては
個別ルートの内容は美雨より上ですが、つばさはどちらかと言うと
家族、あるいは妹、もしくは身内…といった印象が強くて恋人と
いう感じが少し薄くなったのも美雨より下になった原因ですね。
シロップも好きですけど、こちらは個別ルートの終盤のくだりが
どうも好きになれなかった分が響いている感じです。4 人以外の
ヒロインをその他にまとめた事はそのヒロインが好きな人達に
文句を言われそうですが、決して嫌いは訳ではなくて、正直な所
決められないんですよね。琴羽のおとなしい文学少女に見えて
意外と頑固な所やいたずらっ子な所との
ギャップ
とか、空の
普段はサバサバしているけど、ふとした時に見せる少女の部分とか
あまりにも純粋無垢なメーが様々な感情を知っていきながら成長
していく所とか、意外と可愛い所を見せてきたりするみぐみさん
など、それぞれに魅力はちゃんとあります。ただそれ以上に最初に
書いた 4 人が魅力的で、その 4 人の中でも美雨が別格だったと
いう話です。そして忘れてはいけないのがサブキャラクターです。
筆頭は診療所の主治医でクマ先生と慕われる大気の父親ですが
そこに集まる愉快な村人達がこれまたいいんですよね。中盤までは
正直、存在意義に疑問符がつきますが、大気の生存ENDでの村人達は
いなくてはならない存在です。この END で不要といった人と私は
この作品において私は一生分かり合えないと思っています。石原の
じい様のほにゃら言葉の意味とか、茂野のばあ様の優しさ。これを
知ると、やっぱり良いシナリオには良いサブキャラクターが必要と
改めて実感しましたね。それから、シロップの個別ルートでの中村の
じい様の主人公へと問う覚悟。ここも良かったです。彼が若い頃に
おなごにモテたと言うのも案外間違っていないかと正直思いました。
さて、最後に主人公ですが、これが評価が難しい。好意的に書けば
まだ未熟だからこそ、ヒロイン達と心を通わせる事が出来たとも
言えるし、逆に言えば未熟さが原因でヒロイン達を傷つけたりも
します。言動が幼稚だと言ってしまえば否定は出来ませんし、その
部分でイライラした事がなかったと言えば嘘になります。もう少し
年相応な言動であればイライラしなかったとは思いますが、もしも
そうだと、それはそれで、話が進まないヒロインも何人がいそう
なんですよね。ただ、どうしても大気の生存 END でのエピローグの
部分は文句を言いたいです。あれだけ本編で大気を待たせておいて
最後の最後でまた待たせたとか…少しふざけてはいないですかね?
…最後にケチはつけましたけど、主人公以外は登場人物に
大きな
問題もなく良いキャラクター達ばかりでしたね。
(えっ?茂美?
はて…そんなキャラ居ましたっけ?)
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